レポート:個展「偶然のランドスケープ」
更新日:9月2日

2025年10月4日〜16日、みぞえ画廊 福岡店にて個展「偶然のランドスケープ」を開催しました。今回の展覧会は、インドネシアでの滞在制作から帰国してわずか数週間の準備期間で迎えたもので、私自身の中に渦巻いていたエネルギーをそのまま形にしたような、感慨深いな展示となりました。
インドネシア滞在から生まれた「鉄」の新しい感覚
1ヵ月間のバンドン滞在では、火山にリサーチに行ったり、現地の生活や自然に触れながら制作を続けました。バンドン工科大学の溶接室を使い、その場で鉄の棒を曲げ、溶接し、空間に線を描くように作品を生み出していく──。繊細な手仕事ではなく、その瞬間のエネルギーを「バッ」と形にしていく制作。この感覚は私にとって久しぶりに創造意欲が活性化したような体験でした。
現地で発表した《Stone Garden》は、まさに「風景を鉄の線で描く」試みでしたが、帰国後もその感覚を引き継ぎ、心の中にある記憶の風景、故郷・宮崎県五ヶ瀬町の神話的な山並み、そしてインドネシアの火山の風景が重なり合うようにして制作が続きました。今回の個展ではこの「鉄のインスタレーション」が中心となりました。




光と鉄──新たな結合から生まれた作品
長年続けてきた《写光石》シリーズは、今回も新作を制作しました。さらに、鉄作品と写光石の技法を組み合わせた新シリーズ《Dimensional Light(ディメンショナル・ライト)》を発表。鉄の線に、インドネシアで撮影した光の写真を和紙で貼り込み、光が空間に立ち上がるような、重力を帯びた存在を目指したシリーズです。完成度という点ではまだ発展途上ですが、自分の中では強い「これからの可能性」を感じる試みとなりました。


写真と光の再構成《Lightscape》
写光石の技法を応用し、写真をストライプや断片に裁断して構成した《Lightscape(ライトスケープ)》シリーズも展示しました。幾何学的な構成やストライプ状の配置によって、光そのものが新しいリズムや質感として画面に現れる、洗練されたシリーズとなりました。



水彩による《Light》──内側に宿る光
コットンに透明水彩で描いた《Light》シリーズも展示しています。旅先の記憶や心の中に浮かぶ“新生の光”を淡いにじみで表現しました。販売という点ではすぐに成果にはつながりませんでしたが、作品としての可能性は強く感じており、今後も続けていきたい領域です。


鉄によるレリーフ作品
今回、意外と好評だったのはF80号サイズのパネルに鉄の棒を短く切ってランダムに配置した作品。黒い鉄の線が白いパネル上でリズムを生み、見る人によって「木漏れ日」「植物の根」「自然のリズム」など、さまざまな印象を引き起こしました。制作中は頭を空っぽにし、ひたすら“つなげる”ことだけに集中した作品。純粋に鉄の存在感と魅力が前面に出たシリーズでした。


個展を振り返って
2年ぶりのみぞえ画廊での個展。インドネシアから帰国し、無我夢中で制作・準備を行ったこともあり、私にとって非常に手応えのある展示となりました。鉄という素材の圧倒的な存在感、写光石の「光の物質化」、そしてこれらを融合させた《Dimensional Light》シリーズの新しい可能性。これまで自分が積み上げてきた表現と、インドネシアで得たエネルギーが結びつき、新しいスタートラインに立てたように感じています。この経験を手がかりに、作品も自分自身も、さらにバージョンアップしていきたいと思っています。
塩井 一孝 展「偶然のランドスケープ」
会期 2025年10月4日(土)~10月19日(日)
時間 10:00-18:00 会期中無休
場所 みぞえ画廊 福岡店 (福岡市中央区地行浜1丁目2−5)
詳細 みぞえ画廊 ウェブサイト





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