レポート:Langkawi International Marble Art Camp 2025
- 1月6日
- 読了時間: 5分
更新日:6 日前

はじめに
2025年12月19日から28日までの10日間、マレーシア・ランカウイ島にて開催された「LAIN MACAM(Langkawi International Marble Art Camp)2025」に参加した。本プログラムは、マレーシア国立美術館ランカウイ主催によるアーティスト・イン・レジデンスであり、マレーシア、タイ、シンガポール、インドネシア、中国、日本、インド、ネパール、ヨルダンの9カ国から18名のアーティストが集い、現地の特産素材である大理石を用いた彫刻作品の制作が行われた。
会期は10日間であったが、搬入・設営やオープニングレセプション等を除くと、実質的な制作期間は約5日間に限られており、非常にタイトなスケジュールであった。私自身、大理石を主素材として作品を制作するのは今回が初めてであり、大学時代の授業で触れた石彫の記憶を手がかりに、手探りで制作を進めることとなった。
なお、本プログラムにおいて制作した作品は、最終的にマレーシア国立美術館ランカウイに収蔵された。
制作の始まり ― 大理石との出会い
制作初日、支給された大理石はすべてが均一にカットされたものではなく、あらかじめ直方体状に整形されていたのは数個のみであった。私に割り当てられたのは、切り出されたままのラフな状態で、自然な割れや起伏を残した石である。当初用意していたスケッチとは形状も大きさも異なっており、この時点で計画の見直しを迫られた。
しかし、この偶然与えられた自然石に向き合う中で、次第に「この石がもともと持っている形そのものを生かす作品にしたい」と考えるようになった。安全防具(マスク、ゴーグル、手袋等)は十分に支給されており、初めて扱う大理石と工具に慎重になりながら、グラインダーとチゼルを用いて少しずつ加工を始めた。
作業を進めるうちに、石に対して過度に形を与えるのではなく、最小限の手仕事によって、この石が持つ魅力を引き出すという方向性が明確になっていった。午前中は直射日光が強く、作業環境としては厳しい条件であったが、隣で制作していた他国のアーティストから助言を受けながら、石との距離を徐々に縮めていった。


立ち上がるかたち
数日目、底面を平らに仕上げた後、約100kg近い石を彫刻台の上でひっくり返す作業があった。4人がかりで慎重に行い、無事に反転させることができた。その際、石の中央部に谷のような凹みがあることに気づいた。それは実際の山やランドスケープを想起させる形状であり、非常に魅力的であった。この凹みをどのように残し、全体を成立させるかが制作の重要なポイントとなった。
面の処理が進み、全体像が見え始めた段階で、作品はまるでこちらに応答してくるかのような感覚を持ち始めた。この感覚から、作品タイトルを 《Dialogue(対話)》とすることを決めた。

仕上げ ― 素材との対話
底面を再度加工するために石を二度反転させたが、これ以上ひっくり返すことは避けたかったため、丁寧かつスピーディーに作業を進めた。大理石は鉄に比べて面が出しやすく、グラインダーによって面が滑らかになっていく過程は非常に心地よいものであった。大学時代に学んだ彫刻の基礎が生きていることを実感した。
最終的にペーパーは1000番までかけ、白と黒の模様のコントラストが際立つ仕上がりとなった。ナチュラルに残した部分と、人の手を加えた部分のバランスも良く、納得のいく作品に仕上がった。鉄の作品を制作していた時と同じ、あの高揚感と快感を味わった。



交流とプログラム
制作終了後は観光や交流の時間も設けられた。アイランドホッピングでは、ボートから見える島々や山のシルエット、洞窟の景観に強い印象を受けた。また、夜にはアーティスト同士による自主的な作品プレゼンテーションが行われ、それぞれの制作背景やコンセプトを英語で共有した。これは非常に有意義な時間であり、国際的な文脈で自作を語る良い訓練となった。



オープニングと展示を通して
オープニングセレモニーは美術館内外で盛大に行われ、多くの来賓が来場した。展示位置についてはやや不満も残ったが、18名によるグループ展という性格上、ある程度は致し方ないと感じている。一方で、展示構成やライティングに対しては改善の余地を感じたのも事実である。
VIP向けの作品説明では、《Dialogue》が「大理石と対話しながら、どこを残し、どこに手を加えるかを探り続けた作品」であることを説明した。他国の作家が石の内部に明確なイメージを掘り出すアプローチを取る中で、私は石がもともと持つ自然のかたちを尊重し、人の手が過度に介入しない形を模索した。この違いを客観的に認識できたことは、今回の大きな収穫である。
偶然にも、他の日本人作家2名も同様に自然形を生かした作品を制作しており、これは日本的な感性の一端であると感じた。この感覚をどのように武器として世界の中で展開していくか――その課題が、今後の制作に明確に立ち上がったアートキャンプであった。








プログラム名:Langkawi International Marble Art Camp 2025
開催期間:2025年12月19日〜12月28日
期間:10日間(9泊)
主催:マレーシア国立ビジュアルアート開発庁
運営:マレーシア国立美術館ランカウイ
後援:マレーシア観光芸術文化省

The National Art Gallery Langkawi will be organising the “Langkawi International Marble Art Camp (LAIN MACAM) 2025”, an International Sculpture Art Camp. The programme highlights marble as both a natural resource and an artistic medium, bringing together artists to explore, shape and transform Langkawi marble into contemporary sculptural works.
LAIN MACAM 2025 features the participation of 18 artists from 9 countries, comprising Malaysia, Thailand, Singapore, Indonesia, China, Japan, India, Nepal and Jordan.
The programme will take place at Gunung Raya Art Space (GRAS) from 19th to 28th December 2025.



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